前編では、「利島だからこそできる遊びをつくろう」という思いから始まった『利島村かくれんぼ大会』ができるまでの舞台裏をご紹介しました。
「まずはやってみよう」と始まったプレ大会を経て、見つかった課題を一つひとつ見直し、準備や話し合いを重ねて、ついに2026年4月「利島村かくれんぼ大会」本番を迎えました。
イベント当日の様子と、運営メンバーそれぞれが感じた想いをお届けします。

前編で行ったプレ大会には約30名の方が参加してくださいました
プレ大会を終えた運営チームは、「もっとみんなが最後まで楽しめるイベントにしたい」という思いで、本番に向けてルールを見直しました。
プレ大会では、マトリを見つけたらじゃんけんをし、勝った人だけがカードを獲得できるルールでした。しかし、本番ではじゃんけんを廃止し、利島にまつわるクイズに挑戦する形式へ変更。正解すると「正解カード」、間違えても「不正解カード」がもらえるようにしたことで、勝ち負けだけではなく、誰もが最後までゲームを楽しめるルールになりました。
さらに、本番ではゲームに変化をつけるため新たなキャラクター「カラス」「トンビ」が登場しました。
「カラス」に出会うと、その場でミッションが発令されます。ミッションの舞台は、新しくオープンしたマルチコミュニティスペース「まごとえんがわ」です。参加者はボルダリングに挑戦し、見事クリアするとカードを獲得。
そして、もっと厄介だったのが「トンビ」です。いつも人間の美味しいものを狙っているトンビ。見つけてしまうと今まで積み上げてきたポイントがマイナスになってしまうカードが渡されます…。突然のハプニングに子どもたちも驚きの表情!
集落を歩いて探すだけではなく、途中でミッションに挑戦することで、ゲームにメリハリが生まれました。

マトリ!…と思いきや、トンビにポイントを奪われる!?

やったー!カードゲット!!
チーム分けはプレ大会同様、年齢や職場が偏らないよう工夫し、子どもから大人までが自然と協力し合えるように編成しました。当日どなたが参加するかわからない状況でも、その場で顔ぶれを見ながらチーム分けができる。これもある程度お互いが顔見知りという少人数の島だからこそできることだと感じます。
そして、もう一つの工夫が景品です。せっかくのチーム戦なので、景品があったほうが盛り上がるはず。そこで「未使用品を持ち寄って景品にしてはどうか」という案が出ました。
「うちにも実際使ってないものがあって、誰かにもらってほしいと思ってたところなの。」
この発想も、リサイクルショップがない島ならでは。参加者には、各家庭で眠っている未使用品を一家庭につき一品程度持ち寄っていただくことにしました。景品を提供することもイベントへの参加の一つとなり、島のみんなで大会をつくり上げる仕組みが生まれました。
参加者の家にある未使用品や食品を景品にしたことで、物を捨てずに誰かの『うれしい』へつなげることができました。エコにもなりますし、みんなで大会をつくっている実感がありました。
景品はどのくらい集まるのか不安だったけれど、結果的に参加者全員に何かしらの景品が行き渡るほどの量になっていて驚きました。実物を見て物を選ぶ、ということも島の中では数少ない経験。そんな時間を大人も子どもも、楽しんでいる様子が見られたのも良かったなと思いました。
景品を選ぶ時間ももしかしたら各家庭でストーリーがあったかもしれません。景品コーナーは多くの「島民の贈り物」であふれる結果となりました。

大充実の景品コーナー
チーム分けをしている待ち時間にルール説明と参加者全員の自己紹介を行いました。この春新しく利島に移住された方も多くご参加いただいたこともあり、初対面ならではの不安感や緊張をなくすためのアイスブレイクです。
チームが発表された後、かくれんぼ大会専用のマップを配布しました。
今回は集落の一部がフィールドとなるため、安全面も考慮し、エリアや施設の場所がひと目で分かるように描かれた手描きのオリジナルマップを用意しました。
さらに、ゲーム中に新たな展開が生まれるよう、ミッション発令ルールも導入。
大人の参加者にはLINEを活用し、ゲームの途中で「〇〇色の封筒を開封してください」と一斉に指令を出します。そのタイミングでチームごとに事前に配布していたミッション封筒を子どもが開封し、新たな指令に挑戦してもらいます。
ゲームが進むたびに新しい展開が生まれるワクワク感を全員が味わえるよう、細かな仕掛けを散りばめました。
<運営メンバーのひとこと>
ゲーム時間内にもドキドキが味わえるようにミッション発令は絶対したいなと思っていました。参加者の大人にはLINEで一斉配信することにしましたが、それだと子どもが同時にミッションを楽しめない…と悩み、封筒を開封する仕組みを取り入れました。ちょうどそのシーンを目撃していましたが、子どもも大人も一緒になって『なんだろうね!』とワクワクした表情が見られました。みんなで一緒に楽しめる、という目標がここでも叶ったなと嬉しくなりました。
子どもから大人まで、最後まで楽しめるように。運営チームでは細かなルールや仕掛けについて、何度も話し合いを重ねました。

校庭に集合し、まずは自己紹介から

ヒントマトリのミッション発令!!
今回、運営チームが最も力を入れたのが、「伝説のマトリ」の存在です。
プレ大会を経て、本番大会では「より利島らしさを濃くしたい」ということを重要視していました。
クイズを利島にまつわる内容にするだけでは、「利島だからこそ」のイベントとは言い切れません。 運営チームの中でも「多くの島の人を巻き込みたい!」という意識が強くあり、島に長く暮らす方々へご協力をお願いしました。そして皆様には特別な存在「伝説のマトリ」として参加していただきました。「面白そうだからやってみたい」「ここにいたらいいのね!」と快く引き受けてくださいました。
そして、誰が伝説のマトリなのかは運営チームだけの秘密。
当日を迎え「え!?こんな人もマトリなの!?」と想像以上のリアクションをしてくれる参加者の反応を見て運営チームも笑みを隠しきれません。
「伝説のマトリ」はゲームを盛り上げる存在であると同時に、島で長く暮らす方と子どもたちや新たな移住者をつなぐ存在でもありました。本来の目的であった「島全体で遊ぶ」が形になった瞬間でした。

お寺の裏にこっそり隠れる伝説のマトリさん
伝説のマトリは、今回一番こだわった部分でした。最初は『協力してもらえるかな』『楽しんでもらえるかな』という不安もありましたが、当日は皆さんが笑顔で参加してくださって、本当にお願いしてよかったと思いました。普段なかなか関わる機会が少ない世代同士が、かくれんぼを通して島でお話している姿を見ることができ、この企画をやってよかったと感じました。
短い時間の遊びの中で、島民同士の交流のきっかけを作ることもできました。ご協力してくださった「伝説のマトリ」の皆様、本当にありがとうございました!

こんなところに、こんな人たちが!?
今回のイベントで印象的だったのは、年齢や立場を超えて自然と会話が生まれていたことです。子どもと大人が一緒になって集落をまわり、マトリを探す姿は普段の生活ではなかなか生まれない光景でした。
ゲームはあっという間に終了し、最後は学校の校庭に全員集合。ワイワイとした雰囲気の中、結果発表と景品贈呈を行いました。
「伝説のマトリ」になってくださった皆様も集まってくれて隠れ場所の答え合わせ。見つけられなかったチームが悔しがっている様子も見受けられました。
さらに、イベント後のアンケートでは参加者の方々からも嬉しい感想が届きました。
「たくさん歩かなきゃいけないのに文句を言っている子どもがいなかったです。みんな汗をかきながら楽しんでいる様子でした。」
「チーム内や地域の人と交流できて楽しかったです。しかもクイズで地域のことも学べ、景品がリサイクルなのも良かったです。 」
「自然とチーム内で会話が生まれていました。マトリを見つけた時のマトリのカードが可愛かったです! 」
「楽しみながら頭も身体もつかえる良い企画!」
多くの嬉しい声が寄せられ、運営チームも「この企画を形にできてよかった」と大きな達成感を感じました。
島民の人に参加の声掛けをしましたが、久しぶりに連絡をとる方もいて個人的にも楽しい時間でした。会場となる学校の校庭を使用したいため、サッカーチームの代表にも声掛けをし、ありがたいことに練習の時間をずらしていただきました。多くの子どもが参加しているサッカーチームだったこともあり、その話が子どもたちに広がったのか、島の子ども達はほぼ全員が参加してくれました。また、その保護者や指導者も参加してくれて、この島でのつながりの大切さを感じた瞬間でした。
島だからできることを考えて生まれた企画が、人と人をつなぐきっかけにもなりました。

合言葉は…「あなたはマトリですか?」
イベントが終わり、運営チームの緊張もとれ、気持ちは達成感へと変わっていました。
「みんなが楽しんでくれて本当によかった。」
そんな言葉を交わし、余韻に浸りました。
最後に、今回運営メンバーとなったずっとしまライター4名のかくれんぼ大会が終わっての感想をご紹介します。
Sさん
当日の役割:グループ分け、ミッションLINE配信など
グループ分けでは「楽しめなかった…」という方が出ないように参加者の気持ちを考えながら分けました。グループに分かれて作戦会議ですぐにワイワイと話し始めたのを見てホッとしました。低学年、保育園児が多かったチームはちょっとハンデが大きかったかな、思いつつも協力的で頼もしい年上のお兄さん、お姉さんがとてもまぶしく見えました。一番感動したことは、声をかけると皆様協力してくださるということ。地元の方々が「伝説のマトリ」になってくれたり、楽しんでくれたりしている姿をみて、「実はイベント好きなのかな?」と改めて気付きました。安全面への配慮などは必要ですが、考えすぎるとつまらない企画になってしまう。今回は守りに入るのではなく、参加者の気持ちになって企画作りができたことが本当に良かったです。
Kさん
当日の役割:マトリの付き添い、景品の陳列など
私は後から登場する「マトリ」の付き添いをしました。「この人が隠れていたら面白いのでは!?」と思って依頼したけれど、長く島に住むご高齢の男性で、イベントの趣旨が伝わっているのか、当日まで不安もありました。家まで迎えに行って、隠れ場所に行くまでにすぐ見つかってしまって焦ったのですが、本人は聞こえない演技をするなど小芝居をして楽しんでくれていました。普段接点が少ない、最近会っていない島民同士がかくれんぼという企画を通して、顔をあわせ、つながりができた姿を見られて嬉しかったです。
Yさん
当日の役割:トンビ役など
かくれんぼが決まった時、「利島ならできそう!」と思いました。私は当日は新キャラ「トンビ」をやりました。トンビは点数を奪ってしまう、いわば悪役のポジションだったので少し心が痛かったです…。ただ、今回ライター講座からこんなに大きいイベントに発展できたことは未来に繋がる良い一歩だと思います。結果的に子どもたちをはじめ、多くの方の「楽しかった!」という声が聞けて本当に良かったです。今後のイベントを通して頭の中に新しいアイデアも生まれているところです。これからもずっとしまを通して、島の環境を広めていくお手伝いを続けていきたいです。
Iさん
当日の役割:司会進行、写真撮影など
当日、想像を超える人数の方が校庭に続々と集まり、多くの景品が出揃っている様子を見て、ゲーム前なのにちょっと感動してしまいました。その分絶対に楽しんでもらおう!!と気合いも入りました。愛情をこめて作ったトレカ風カードは私のオリジナルデザインです。マトリやネコを利島の日常風景や景色の中に溶け込ませました。対決がテーマですが、「お互いに本当は仲良くしたいのかも?」と思わせるような、少し遊び心のあるカードも実は忍ばせていました。
今回のかくれんぼを通して、利島には人を楽しませるアイデアや才能を持った人がたくさんいることを改めて感じました。ずっとしまの一つの講座から始まって、運営チームの力が合わさってできたイベントは、私の中でも大きな思い出になりました。これからも、ずっとしまから始まる〇〇をたくさん生み出していきたいです。

「ほら!カードいっぱい集まったよ!」

先生と児童も今日は同じチームで
利島村の人口の2割超え、約70人が参加した利島村かくれんぼ大会。「またやってほしい!」という嬉しい声もたくさんいただきました。
一方で、参加者に何度でも楽しんでもらえるよう、仕組みを工夫し、どのように変化しながら続けていくかという課題もあります。そして何より、この挑戦を一度きりで終わらせず、島に根付く取り組みへ育てていく必要があると感じています。
島から生まれたリアルを「ずっとしま」というメディアとして発信し、未来へ残す。その積み重ねが、人と人とのつながりを育み、この島の新たな可能性につながっていくのだと感じています。
ずっとしまは、これからも利島だからこそできる遊びや交流を形にしていくことで、人と人をつなぐ新しい挑戦を続けていきます。




最後に、今回は写真撮影が得意なお二人にもご協力いただき、たくさんの素敵な写真を撮影していただきました。
ご協力いただいた皆様、そしてご参加くださったすべての皆様、本当にありがとうございました。