知る、そして伝えたい想い —— 子どもたちが見つけた利島と椿の魅力

お知らせ

2026.03.10

#インタビュー #子育て #注目情報

「利島のことをもっといろいろな人に見てもらいたいんです!」

今回、子どもたちのその言葉をきっかけに、ずっとしま編集部・イシイは学校へインタビューに向かいました。

利島小中学校で総合学習の時間に行われた、利島を深く知るための授業「さとプロ2025」(※以下「さとプロ」)。今年度3~5年生が取り組んだテーマは、島の暮らしに深く関わる“椿”でした。椿は冬になると花が咲き始め、利島全体を鮮やかに彩ります。

利島で生まれ育った児童たちにとって、それは当たり前の景色である一方で、今年初めてこの景色を味わうという児童もいます。今回の「さとプロ」を体験し、児童たちにどのような心境の変化があったのでしょうか。3、4年生の児童にその時の様子を伺いました。

「さとプロ」を振り返って3、4年生へインタビュー

まずは自分たちの住む利島の椿を知る

利島には約20万本の椿の木があるといわれています。島のあちこちに椿があるため、私たちは毎日のように目にしている植物ですが、椿の木や花はどんな特徴があるのか、どのように加工されているのか、それらを詳しく知る機会は意外と多くありません。児童たちはまず初めに、椿の搾油体験に挑戦することになりました。

作業は、椿の実を砕くところから。そのあと加熱して、圧力をかけて油を搾ります。これが意外と重労働。

加熱した実はホカホカで「パンみたいな匂い!」とみんなで興奮します。しかし、試しに少しかじってみると…「いい香りなのにすっごく苦い…」

そんな経験をしながらも、ひとつひとつの作業を五感で楽しんでいきます。

搾った油は5日程度丁寧にろ過して、立派な椿油となりました。

持ち帰った椿油はどうしたのか、使い道を聞いたところ「使いたいけど自分で作ったからか使うタイミングが難しい…」と3年生の児童が話してくれました。

その一言から、自分たちで作ったモノだからこそ、そのモノにも愛情が生まれていることが伝わってきます。

「レンジの中はどんな様子かな?」

興味から生まれたそれぞれの研究テーマ

搾油体験のあと、子どもたちは自分が気になったことをもとに「椿」にまつわるテーマを各自で決め、研究と作品づくりを進めていきました。

目指すゴールは1月の「展覧会」。何を作るか、それをどう表現するかも自分たちで考えます。

椿油を紹介するポスターを制作した児童は、実際に製油工場(利島村椿油製油センター)へ見学に行き、働く人にインタビューをしました。聞いた内容を整理し、iPadを使ってスライドにまとめ、さらに椿の花や油の様子を手描きのイラストで表現。手描きとデジタルを上手に組み合わせながら、伝わりやすい構成を考えました。

料理が好きな児童は、椿を使った「椿ジャム」と「椿シロップ」のレシピ本を作りました。インターネットで椿を使った料理を調べてから、AI機能を活用して、レシピを作るための資料を集めます。実際に家でもシロップ作りに挑戦しましたが、クエン酸がなく砂糖水のようになってしまい失敗。レモン汁を入れてみても味は変わらず、思うようにいきませんでした。それでも諦めずに、学校で材料をそろえて再挑戦し、見事シロップ作りに成功!「夏になったら椿シロップでかき氷を食べてみたい」と、次の楽しみもできました。

レジンをつかった作品づくりに挑戦した児童は、椿を使ったキーホルダーを制作。本物の椿の花びらを中に閉じ込めたり、椿らしい赤色を表現したりと細部にまでこだわりました。特に難しかったのは、レジン液の量と花びらを入れるタイミング。少しの違いで仕上がりが変わるため、つまようじで表面を整えながら慎重に作業を進めたそうです。試行錯誤の上、3回目のチャレンジで理想としていた完成形に近づきました。

またレジンでイヤリングを制作した児童もいます。左右で色を変えて、椿の花びらがよく見えるようにこだわりました。

さらに、椿を使ったしおりも作成。熱で椿の美しい赤色が消えないように、自分でやり方を調べ、最大限椿の色が残るように工夫したそうです。

さらに、ペンケースとダッカールを作った児童も。満開に咲く椿のペンケースの絵は手描き、同じく椿をあしらったダッカールの刺繍はすべて手縫いです。デザインを自分で考え、縫い方などは家庭科の先生に相談しながら進めました。およそ授業5時間分を費やし、焦る気持ちになりながらも、少しずつ仕上がっていく過程を実感しながら完成へと近づけていきました。

今回取材をした3、4年生の児童6人の話を聞いて、どの制作過程にも共通していたのは、調べたことを「知る」だけで終わらせていなかったということ。それぞれが誰かに届けたいという想いを抱きながら自ら手を動かし、形にしていきました。

学年の境目をこえて共に学べる環境も、島の学校ならではの姿

失敗を繰り返し、学びにつなげる

とても完成度の高い作品が揃いましたが、作品づくりは順調なことばかりではありませんでした。

「レジンの量がうまくいかない…。」
「刺繍がなかなか進まない…。」
「展覧会までに時間が足りない…。」

制作半ば、そんな不安な気持ちが大きくなっていきました。

しかし、学習をふりかえった時に全員口をそろえて言っていたのが「完成して嬉しかった!」という言葉。

なかなか思うように作業が進まず、展覧会までの限られた時間の中、不安になる場面が何度もあったそうです。それでも手を止めず、まわりの友達や先生に相談し、助けてもらいながらみんな着実に作業を進めていきました。失敗したらやり直し、うまくいかなければ自分で調べてみて方法を変える。ひたすらその繰り返しでした。

失敗や経験から多くのことを学び、作品は無事完成。見事に展覧会に作品を並べることができました。

今年度の展覧会の様子

「もっと知ってもらいたい!」ーじゃあどうする?

展覧会は無事終了。しかし、児童たちの挑戦はそこで終わりではありませんでした。

「もっといろいろな人に見て、知ってもらいたい!!」

島内の人だけではなくて、観光で訪れた人にも自分たちの作品を見てほしい。島の魅力を伝えたい。そんな想いから、作品は【利島港船客待合所】に展示されることになりました。

船客待合所は、船の発券や待機場所として利島港を利用する多くの方が毎日利用している場所。

展示方法も自分たちで考え、細かく工夫をしました。そのうちのひとつとして、展示用として新たにレジンで<TOSHIMA>の文字を作成。そのほかどんな配置にしたら目に留まりやすいか、特別感を演出できるかなどをみんなで話し合いました。

「どんなふうに掲示する?」

「島外の人にも“発信”をしたい!」ー想いを言葉にのせて

さらに、話し合いをしていく中で利島の情報を発信する当サイト「ずっとしま」に記事を掲載したいという声も上がりました。

実は今回のインタビュー・記事は、そんな子どもたちからの声がきっかけで実現したもの。

児童たちは慣れないインタビューに戸惑いながらも、質問に対して一つひとつその時の気持ちを言葉にして届けてくれました。

このように、自分たちの学びを外へ届けたいという想いが、教室を飛び出して次々に形になっていきました。

インタビュー場所は子どもたちの希望で図書室に

この島をもっと好きになる

児童たちは、今回の学びを通してたくさんの発見をしました。その発見は、次の挑戦へとつながっていきます。

インタビューの最後に、来年度の「さとプロ」ではどんなことをしていきたいかを聞いてみました。

すると、「別の花でレジン小物を作りたい」「刺繍に挑戦したい」「新しい作品を作りたい」…など児童の口からは続々とアイディアが沸いていきました。さらに、来年度は同じく利島の特産物である「サクユリ」や「明日葉」にチャレンジしたいという声も。

利島について興味をもって調べて「知る」。それを形にして、「伝える」。

この一連の体験は、単なる学習活動にとどまらず、着実に利島への愛情にもつながっていくことでしょう。

今後子どもたちの自由な発想と感覚が、利島の可能性をますます広げてくれることに期待し、そんな姿を「ずっとしま」でもしっかりと見届けていきたいと改めて感じました。

3、4年生の作品は2026年3月12日頃まで、利島港船客待合所にて展示されています。ひとつひとつ子どもたちの手で作られた「利島と椿」の姿をぜひ直接ご覧ください。

この記事を書いたのは・・・

イシイエミコ

イシイエミコさん

利島村地域おこし協力隊・島暮らし1年目。埼玉県出身、元アパレルパタンナー。心ときめくものを常にさがしています。