移住して半年、初めての年末年始を利島で過ごしました。
年末年始は、各地の風習や文化が色濃く現れる時季だと思いますが、利島のお正月も、ここならではの過ごし方がありました。

利島から眺める富士山
12月24日、神社にしめ縄が飾られると、島にはどことなく年末の空気が漂います。
島の中央にある宮塚山は、正月に神様が降りてくるという言い伝えがあります。この日を境に、村から山へ向かう道には入らないようにする方もいらっしゃいます。
各家庭で年末準備をするのは、29日。
利島では「餅もみ」と言い、神棚や仏壇に供える丸餅を作ります。
昔は、若い衆が各家庭を訪問し、餅をついて回ったそうです。今では餅つき機を使う家庭も多く、当時の規模では行われなくなりましたが、縁のある人が集まり餅もみをして、宴をしている様子は今も残っています。
私もあるお宅に伺わせていただき、餅もみに挑戦しました。
慣れた手つきで次々と、きれいな丸餅を作る皆さんに混ざり、「慣れよ、慣れ!」なんて声をかけてもらいながら、私も手を動かしました。出来上がったのは、少しいびつな丸餅。
形の良いものはお供え用に分け、残りは皆さんのお腹の中へ。
笑い声の中で食べる、つきたてのお餅は、やっぱり格別の美味しさでした。

利島は、丸餅派
大晦日の深夜。
新しい年を迎えるため、阿豆佐和気命神社へ人々が集まってきます。
参道の脇では、「ジックワ火」と呼ばれる火が焚かれていました。人の背丈ほどの火柱は、夜の寒さを和らげてくれていました。

やがて年が明けると、子どもたちの元気な「ジックワ」の声が境内に響き、「ジックワ火の歌」が歌われます。
「ジックワ」は、「十貫(かん)」や「十鍬(くわ)」という記載がされている書物もありますが、諸説ありそうです。
集まった人たちは神社で初詣を済ませると、その足で長久寺へ向かい、お墓参りをしてから家路につきました。
ご先祖様を大切にする方が多い、とても利島らしい、昔から続く新しい年の始め方でした。
三が日に行う『山廻り』という風習があり、元旦は、神社参拝をしながら島を一周してきました。
利島には、島を1周するように神社が点在しています。
それぞれ、一番神社、二番神社、三番神社と愛称があり、
島の北側に位置する集落からスタートして、西廻りで一周します。
榊、米、お神酒をもって神社を巡り、新年のあいさつをして回りました。
米やお神酒は、購入して準備しましたが、榊は売っているお店がなく、一緒に山廻りした方の庭先に生えている榊を分けていただき、手折って持っていきました。
12月24日以来、山へ入らなかった方々も、この山廻りをもって、解禁となるそうです。

鳥居の前にお供えして、奥に入らずお参りしました
高校・大学へ進学するために島を出た子が利島へ帰ってきたり、「二十歳のつどい」が1月2日に催されたり、一方で、移住者も里帰りのため島から出たり、年末年始にあわせて船やヘリコプターで出島・帰島する人の動きが増えます。家族や大切な人のもとへ向かうその行き来も、年末年始らしい景色でした。
静かな行事の時間と、人が行き交う港の様子。
そのどちらもが、利島のお正月を形づくっているように感じました。