「椿の島で育つ」ということ――【利島村保育園】搾油体験&お菓子作り

読みもの

2025.12.26

#子育て #暮らし #注目情報 #移住

利島港から歩いて約20分。元気な声が響きわたるその場所に、村内唯一の保育園「利島村保育園」があります。

「椿の島」と呼ばれる利島では、保育行事にも地域の特性を生かした取り組みが数多く盛り込まれています。今回はそのひとつ、利島の特産物である椿を使った【椿油の搾油体験&お菓子作り】に密着しました。

「椿の種子、何個あるかな?」

椿は、秋になると実が熟し、やがて木のまわりにはコロコロと種子が落ち始めます。

利島には島内に約20万本の椿が生えているといわれており、地面に落ちた種子を手で一個一個拾い集め、椿油の原料となる種子を採取します。

今回の搾油体験で使った種子も、園児6人が自分たちの手で丁寧に拾い集めたもの。保育園では、1〜10の数字が書かれたマスに種子を並べ、数を数えていきます。

1個、2個、3個…。さて、いくつあったのでしょう??

なんと、椿の種子は全部で488個!みんなで力をあわせて800グラム超の種子を集めていました。そこから丁寧に外側のカラをむき、半分の約400グラムが搾油の原料に。

こちらを別日に搾油していきます。

いざ、搾油してみよう!

搾油体験当日。農協(利島農業協同組合)の加藤さん、上田さんからレクチャーを受けながら、園児も実際に搾油に挑戦していきます。

まずはカラをむいた種子を細かく砕く作業から。
二人一組、3チームに分かれ、ビニール袋に入れた種子をハンマーで叩いていきます。ムラがないように確認しながら、力いっぱい叩いて細かくしていきます。

砕いたものをレンジで温め、ほかほかの状態のまま搾り機へ。

こちらも二人一組で、搾り機のレバーに体重をかけ、ぐーっと押し下げていきます。これが油の抽出作業。まわりからも「がんばれー!」と応援の声が飛び交います。

しばらくすると、搾り機からポタ…ポタ…と、油が滴り落ち始めました。「油になってる!!」と自分たちの手でつくられた油に子どもたちも大喜び。

搾った油をじっくり観察すると…

搾った油はロートとろ紙を使って一滴一滴、時間をかけて「ろ過」していきます。
搾油したての椿油はやや濁っており、じっと覗いても向こう側が見えません。

しかし、時間をかけてゆーっくりと ろ過していくと…

先ほどとは見違えるほどに、向こう側が透けて見えるきれいな油が抽出できました。余分な搾りかすや汚れが取り除かれ、黄金色に輝く「利島の椿油」の完成です。

部屋はナッツのような椿油の香ばしい香りと、子どもたちの歓声に包まれていました。

2日かけて丁寧にろ過した椿油(180ml)

次はスイートポテト作り!

翌々日、再び保育園に伺うと、椿油を使ったお菓子作りが行われていました。今回作るのは「スイートポテト」。

なんと材料のさつまいもは、この秋に保育園の畑で収穫されたもの。子どもたちが全身の力をつかって掘り起こしたお芋を、自分たちのつくった椿油で仕上げていきます。

まずはさつまいもを切って温め、二人一組でつぶしていきます。つぶしたさつまいもに牛乳を入れ、さらに搾りたての椿油を加えると、つややかでしっとりとした仕上がりに。

そこから、子どもたちのかわいらしい手のひらサイズになるよう形を整えます。思い思いの形になり、個性あふれるスイートポテトがずらりと並びました。

どんな味になるかな?

美味しさの秘訣は…「椿油」?

午前中に成型したスイートポテトを、午後のおやつの時間に焼いていきます。
ひとつは市販のサラダ油。もうひとつは椿油をたっぷりと使って焼いていきます。

ふたつを食べ比べたら、見た目・味にどんな違いがあらわれるのでしょうか。

農協の加藤さんによると、
「椿油は熱に強く、焦げにくい。表面にきれいな焼き色がつくので、お菓子作りにもピッタリなんですよ。」
とのこと。

実際に焼きあがったものを比べてみると、その差は一目瞭然。

椿油で焼いたほうは焦げつきが少なく、まんべんなくきれいな焼き色がついていました。その出来栄えに「こんなに差が出るとは!」と、大人のほうが興奮してしまうほど。

焼いている間、部屋の中がふんわり甘い香りに包まれ、子どもたちも「なになに?」と香りをたどって嬉しそうな表情で部屋に集まります。

上側がサラダ油、下側が利島の椿油。

みんなで「いただきます!」

スイートポテトが焼き上がり、子どもたちも配膳の準備を始めました。農協職員、役場職員、そして村長も加わり、みんなでテーブルを囲みます。

ようやく手作り【椿油スイートポテト】を食べ比べ。

せーの!「いただきます!!」

みんなで一からつくったスイートポテト。一口食べると、さつまいものやさしい甘みがふわっと広がります。

使った油による味の違いを聞くと、「うーん…どっちもおいしい!!」という声が。味の差はわずかでしたが“自分たちで作った”というだけで、それは特別なこと。

子どもたちは「あまい!」「もっと食べたい!」と嬉しそうに、夢中で頬ばっていました。気がつけばお皿はあっという間に空っぽに。

最後は元気にーー「ごちそうさまでした!」

お客さんもたくさん来てくれました

ここでしかできない“体験”を

利島を代表する特産物である椿油を自分たちの手で作り、味わうことは、まさにこの島だからこそできる経験です。そしてこの経験・思い出を「忘れないでほしい」という先生方の強い気持ちが詰まった、あたたかいイベントでした。

利島の四季を表現するのに「椿」はとてもわかりやすい指標になります。たとえ島を離れる日が来ても、季節の訪れとともに、ふとした瞬間に利島の風景や香りを思い出すきっかけになることでしょう。

そんな思い出の過程に立ち会えたことが、取材者として、そしてこの島で暮らす一人の島民として、なによりの喜びでした。

この記事を書いたのは・・・

イシイエミコ

イシイエミコさん

利島村地域おこし協力隊・島暮らし1年目。埼玉県出身、元アパレルパタンナー。心ときめくものを常にさがしています。