
村民ライター:ひかる
利島といえば“椿の島”。島の大部分は椿林に覆われています。
昔は今のような物流がなかったため、自給自足の畑も多くあったそうです。しかし、年々使われなくなり、藪になっているところも増えていると聞きました。それでも自分で野菜を育ててみたく、どうにかならないかと方法を探していました。
利島での話に入る前に、私が農作業に魅かれることになった“きっかけ”からお話したいと思います。
約1年前、東京都三鷹市の住宅街にある「冨澤ファーム」さんで毎月開催している農作業のボランティアイベントに参加したのがすべての始まりでした。
初めて参加した日の作業は雑草抜き、ふかふかの土に生えた雑草が「ずぽっ」と抜けるあの感触は、なんだかクセになる楽しさでした。他の参加者とおしゃべりしながら和気藹々と作業しつつ、きれいになった畑に達成感を感じました。お昼は、外に机を広げて、賄いチームが丁寧に作ってくれた美味しい料理をいただき、大満足でした。
いつもオフィスビルの中で夕日すら見れない生活だったので、広い空と太陽のもと風に吹かれながら過ごす時間がとても気持ち良かったです。
三鷹の空
月に1回のボランティアイベントに通っているうちに顔見知りが増え、自然や食など共通の話題が多かったことで話も弾みました。また、ここの畑に集まる方々は、野菜や天気の都合を“待てる”、穏やかで大らかな方が多い印象でした。いつも和やかな雰囲気が流れていました。
通うごとに季節が変わり、収穫する野菜も、
夏は枝豆、きゅうり、トマト、とうもろこし。秋にはサツマイモやかぼちゃ、冬には大根、かぶ、長ネギ、キャベツ、ブロッコリー。そして春になると、のらぼう菜が元気に育ちます。
季節の物を穫れたてでいただくのは何よりも美味しく、さらに身体を動かした後の食事がまた美味しく、「美味しい」が原動力の一つでした。
収穫した冬野菜
畑や水田がない地域で生まれ育って、小学校時代に農業体験などに参加していたものの、自分で植物を育てたのは小学校の朝顔やミニトマトだけ。植木鉢すら持っていませんでした。しかし、農作業に出会ってからの1年で、月1回のボランティアからアルバイトするまでに農作業に魅かれていきました。
利島へ引っ越すタイミングで畑のアルバイトは退職したのですが、「農作業したい!自分でもやってみたい!野菜収穫したい!採れたて食べたい!」気持ちがどんどんあふれて、ついに我慢できなくなってしまいました。
農協(お土産から日用雑貨まで何でも売っている商店)で土とプランターを購入。餞別でいただいた野菜の種をまいたのは、引っ越してから5日目でした。
プランターに植えた野菜の芽が出ました!
そんなある日、数か月前にケガをして苗が植えられずに困っている方と出会いました。その後、畑のお手伝いをさせていただいたご縁で、有り難いことに畑の一部を期間限定で使わせていただけることになりました。
こんなに早く野菜づくりができる機会が来るとは思っていなかったので、とても嬉しかったです。
仕事のない日と朝夕の時間を使って、雑草や竹を撤去して人力で耕して、数種類の野菜を育て始めました。
野菜づくり、初めてのシーズン。ちゃんと実るかドキドキしながらも、収穫できたらみんなで楽しみたい。そんな思いで、農作業を楽しんでいます。
耕して、夏野菜の種をまきました。
今は、長期的にお借りできる畑を探しながら、次の季節に向けて思いを巡らせています。
どんな野菜を育てようか。どうやって育てようか。誰と分かち合おうか。 利島の土とともに、これからの季節を楽しんでいきたいです。